【週刊水産ニュース】熊本地震で陸上養殖サーモン20万匹死ぬ、上半期の輸出はブリが69%増、秋サケ来遊予測は前年の53%(2026年8月3日〜9日)
2026年8月3日から9日までの1週間、水産の分野で何が起きたか。7本にしぼってまとめました。
すべての項目に出典リンクをつけています。
1. 熊本地震、養殖被害12件に 八代ではサーモン約20万匹が死ぬ
7月28日16時27分に発生した令和8年熊本地震(熊本県熊本地方、マグニチュード7.1、最大震度7)の被害が、水産の現場にも広がっています。
農林水産省は8月4日、養殖施設の被害が熊本県内で新たに7件確認され、計12件になったと発表したと報じられています。
ノリの乾燥機の被害や加工関連設備の転倒があり、サーモンの施設では水槽のひび割れが確認されたとされています。
被害が最も大きく報じられたのは八代市です。NHKによれば、同市で10年前からサーモンの陸上養殖を行う会社で、停電で水槽に酸素が送れなくなるなどしておよそ20万匹の魚が死ぬ被害がありました。
陸上養殖は電気で水と酸素を回します。停電がそのまま全滅につながる構造的な弱さが、今回はっきり出た形です。
出典: 気象庁「令和8年熊本地震 ポータルサイト」 / NHK「熊本地震 サーモン養殖の会社で約20万匹が死ぬ被害 八代」(8月4日) / 山陰中央新報(共同通信)「熊本地震による養殖施設の被害、計12件に」
2. 上半期の農林水産物・食品輸出が過去最高 ブリは69%増
農林水産省は8月4日、2026年1〜6月の農林水産物・食品の輸出実績を公表しました。
総額は8,977億円で前年同期比10.9%増(+880億円)。上半期として2年連続の過去最高です。
このうち水産物は2,384億円で、前年同期比19.5%増。全体の伸び率を大きく上回りました。
時事通信の報道によれば、品目別の伸びが目立ったのは緑茶(482億円・83.5%増)とブリ(434億円・69.0%増)で、ブリは単価上昇に加えて北米・韓国向けの需要が堅調だったとされています。23品目が過去最高を記録したとのことです。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション(著作権保護期間満了)
出典: 農林水産省「2026年1-6月(上半期)の農林水産物・食品の輸出実績について」 / 時事通信「食品輸出、10.9%増 過去最高、緑茶やブリがけん引―26年上期」
3. クロマグロ増枠、8月中にも作業部会へ 水産庁が調整
7月14日に閉幕した国際会議で、日本が提案した大型魚(30キロ以上)の漁獲枠25%拡大案は、メキシコの反対で合意に至りませんでした。
その後、状況が動いています。
共同通信によれば、水産庁は8月5日、太平洋クロマグロの資源管理をめぐる交渉再開に向けて調整を進める考えを、自民党の会合で示しました。早ければ8月中にも他国を含めた作業部会の開催をめざすとされています。
背景には政府の働きかけがあります。同報道によれば、7月30日に農林水産省の山下雄平副大臣がメキシコを訪れ、現地の担当相らに再検討を働きかけました。
山下副大臣は「クロマグロの漁獲枠は日本国内で政治問題化しており、日本の案に近い調整案に賛同してほしい」と伝えたとされています。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション(著作権保護期間満了)
出典: 共同通信「マグロ交渉再開に向け調整 拡大反対のメキシコ、一転支持で」 / 水産庁「太平洋クロマグロの漁獲状況について」
4. 境漁港のクロマグロ、漁獲量は減ったが単価は過去2番目の高値
鳥取県の境漁港では、クロマグロの巻き網漁が7月21日に終わりました。
NHKが8月5日に伝えたところによれば、今季の漁獲量は940トン余りで、前年より190トン少ない結果でした。
一方でキロあたりの単価は過去2番目の高値だったとされています。
獲れる量が減っても金額が落ちない。前項の増枠交渉が国内で「政治問題化」している理由の一端が、この数字にあらわれています。
出典: NHK「境漁港 クロマグロ今季漁獲量減 キロ単価は過去2番目の高値」(8月5日)
5. 北海道の秋サケ、来遊予測は365万尾 オホーツクで自主規制
秋サケのシーズンを前に、厳しい数字が出ています。
北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場が6月24日に公表した資源状況によれば、2026年の全道への秋サケ来遊数の予測は365万尾。前年(686万尾)の53.1%にとどまります。
その前年もひどい年でした。2025年の全道来遊数は686万尾で前年比39%、平成以降では過去最低の水準。予測に対する実績は60%と、予測すら大きく下回りました。
海区別の予測は、オホーツクが210.8万尾(前年比49.9%)、根室が33.1万尾(同51.9%)、えりも以東が56.4万尾(同87.9%)、えりも以西が25.1万尾(同41.9%)、日本海が39.0万尾(同51.5%)です。
こうしたなか、北海道新聞は8月6日、オホーツクの漁業者が秋サケ漁の自主規制を「やむを得ない」と受け止めていると報じました。釣りの自粛を求める意見も出ているとされています。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション(著作権保護期間満了)
出典: 北海道立総合研究機構「北海道の秋サケの資源状況(来遊予測)」 / 北海道新聞「秋サケ漁の自主規制『やむを得ない』 オホーツク漁業者」
6. 完全養殖ウナギ、量産投資が相次ぐ 山田水産は10倍増強、新日本科学は年100万匹へ
今年5月に完全養殖ウナギの蒲焼が世界で初めて試験販売されました。その供給側が動いています。
日本経済新聞は8月6日、鹿児島県の山田水産が完全養殖ウナギの稚魚(シラスウナギ)の生産設備を大幅に増強すると報じました。
同紙によれば、現在12槽ある稚魚用の水槽を45槽に増やし、2028年度に年10万匹の生産をめざすとのことです。現在のおよそ10倍にあたります。
水産研究・教育機構によれば、山田水産は2024年以降2年連続で、同機構と同等の効率で年間1万尾以上の完全養殖シラスウナギの生産に成功しています。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション(著作権保護期間満了)
週末には、もう一社の動きが伝えられました。
共同通信は8月9日、医薬品開発受託の新日本科学が鹿児島県の沖永良部島で完全養殖ウナギの量産に乗り出したと報じました。6億円をかけて施設を整備し、年100万匹の生産を目標とするとされています。
山田水産の2028年度10万匹という目標と並べると、桁がひとつ違います。ウナギの完全養殖は、研究段階から投資の段階に移りつつあるようです。
出典: 日本経済新聞「完全養殖ウナギの山田水産、28年度に稚魚10万匹生産 10倍に設備増強」 / 沖縄タイムス(共同通信配信)「完全養殖ウナギ量産挑戦 鹿児島の企業 年100万匹目標 6億円かけ施設整備」(2026年8月9日) / 水産研究・教育機構「完全養殖ウナギ蒲焼の試験販売」(2026年5月20日)
7. ハワイにしかいなかった深海魚を南大東島沖で発見 「シマグツ」と命名
琉球大学は8月6日、これまでハワイ諸島の深海からしか採集例のなかった希少なアカグツ科の魚 Solocisquama erythrina が、南大東島沖で見つかったと発表しました。日本初記録です。
採集は2025年7月、無人探査機による調査中のことでした。南大東島の北沖、水深760メートルの急峻な海底で1個体が採集されています。
ハワイからの距離は6,000キロ以上。それだけ離れた海にも分布していたことになります。
研究グループは、この魚に「島」にすむアカグツ科魚類という意味で「シマグツ」という標準和名を提唱しました。
体表全面に固い鱗をもち、鱗のそれぞれには先端が3〜4叉に分かれた棘が1本ある。体色は薄い赤色だといいます。
研究は琉球大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、株式会社FullDepth、いであ株式会社、新江ノ島水族館の研究者らによるもので、成果は学術誌 Species Diversity に掲載されました。
出典: 琉球大学「南大東島沖で日本未記録の深海魚を発見 〜『島』にすむアカグツ科魚類『シマグツ』〜」(2026年8月6日)
8. オカムラ食品工業、売上高427億円で過去最高
サーモンの海上養殖を手がける青森市のオカムラ食品工業が、2026年6月通期の決算を発表しました。
東奥日報によれば、売上高は前期比20.9%増の427億2600万円で過去最高。営業利益は28.2%増の38億7300万円、経常利益は44.1%増の40億5600万円、当期純利益は37.7%増の27億8200万円と報じられています。
同紙は「好調な海外卸売り事業や国内加工事業がけん引した」としています。
今週の話題では、上半期の輸出が過去最高(2番)、秋サケの来遊予測が前年の53%(5番)と並びました。国内の天然資源が細るなかで、養殖と輸出の側から数字が伸びている——この決算はその一例です。
出典: 東奥日報「オカムラ食品売上高、過去最高の427億円」
9. いすみ・大原漁港でイセエビの初水揚げ
千葉県いすみ市の大原漁港で、8月8日にイセエビの初水揚げがありました。
千葉日報によれば、海況が悪く漁に出た船は例年の3分の1程度で、初水揚げ量も昨季を下回ったとのことです。それでも、重さ1キロ以上の「ジャンボ」と呼ばれる大物も揚がったと伝えられています。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション(NDL PID:1286918 コマ11・著作権保護期間満了)
大原漁港はイセエビの水揚げで全国有数の港です。夏の解禁は、外房に秋の味覚のシーズンが来たことを告げる行事でもあります。
出典: 千葉日報「待望伊勢エビ、初水揚げ いすみ 高級食材の旬到来」(2026年8月8日)
今週のまとめ
災害と資源減、そして輸出の伸び。方向の違う数字が同じ週に並びました。
ブリの輸出は69%増、クロマグロは獲れなくても単価が落ちない。一方で秋サケの来遊予測は前年の半分近くまで下がり、陸上養殖は停電ひとつで20万匹を失いました。
売れる魚と、獲れる魚。その二つがだんだん別の話になってきています。
SAKANA 編集部
良輔 × Claude(Anthropic)
論文・古文献・信頼報道から確認した事実だけを掲載する魚の知識図鑑。 人間が判断し、AIが調査を支援する協働プロジェクトです。