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魚へんの漢字

魚へんに休の読み方はゴリ|江戸の本は鮴を「字書に見ることなし」

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難易度 上級

この字、読めますか?

鮴

訓
ごり・めばる
画数
17画
この記事の目次

魚へんに休と書く「鮴」を見出しに立てた江戸の本が、そのすぐ下にわざわざ「字書に見ることなし」と断っていました。読みはゴリで、川の石の下にひそんでいる小さな魚のことですが、メバルと読むこともあります。魚が休むというおもしろい字なのに、使った当の本が、字書には載っていないと認めていたことになります。

三代歌川広重の錦絵。緑の山あいを流れる川で、三人の男が板とざるを使って魚をとっている。右上の黄色い札に「淺野川鮴捕」
加賀の浅野川で魚をとる人たち。右上の黄色い札に題があり、「鮴捕」の右に「ごりとり」と振り仮名がある。
出典:東京都立中央図書館 TOKYOアーカイブ(歌川広重(3世)画「日本地誌略圖 三十六 加賀國 淺野川鮴捕」・https://archive.library.metro.tokyo.lg.jp/da/detail?tilcod=0000000003-00233918 ・画像の使用条件 パブリックドメイン)。枠の外の余白を切り落とした

絵の右上、黄色い札の題は「淺野川鮴捕」、浅野川のゴリとりで、この浅野川の名前は、あとで江戸の本のなかにも出てきます。

「鮴」の基本データ

読み
ごり・めばる(訓)。音読みの登録はない
画数
17画(魚へん11画+右側6画)
形
魚へんに「休」
江戸の本は
『日本山海名産図会』が見出しに立て、「字書に見ることなし」と注記した
ほかの書き方
石伏・古里魚・石斑魚。『大和本草』はカタカナの「ゴリ」
難易度
上級

読みと画数は Unicode の Unihan Database(U+9BB4)による

字の成り立ち 見出しに立てた本が「字書に見ることなし」

鮴=魚+休うおへん休むの休

その本が『日本山海名産図会(にっぽんさんかいめいさんずえ)』です。各地の名産と、そのとり方・作り方を絵入りで紹介した本で、寛政10年(1798年)の序があり、巻之四のコマ19にゴリが出てきます。

『日本山海名産図会』巻之四コマ19の見開き。右ページのはじめに「焼蛤幷ニ時雨蛤」、同じ右ページの左寄りに見出し「鮴」
『日本山海名産図会』巻之四の見開き。右ページのはじめは桑名の焼きはまぐり。その説明が終わった右ページの左寄りに、丸印つきの見出しが立ち、説明は左ページへ続く。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『日本山海名産図会』巻之四・NDL PID:2575829 コマ19・著作権保護期間満了)
『日本山海名産図会』コマ19の見出し「鮴」と振り仮名「ごり」、注記「字書に見ることなし」「姑く俗に從がふ」の大写し
右が見出し「鮴」。右肩に振り仮名「ごり」。中央と左は、見出しのすぐ下の小さな字の注で、「字書に見ることなし」「姑く俗に從がふ」。一列を二つに切って並べた。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『日本山海名産図会』巻之四・NDL PID:2575829 コマ19・著作権保護期間満了)

見出しは「鮴」、振り仮名は「ごり」で、そのすぐ下に小さな字で「字書に見ることなし」と注がついています。見出しに立てておきながら、この字は字書には見当たらないと断り、続けて「姑く俗に從がふ」、しばらく世間の書き方に従っておく、と書いているのです。字書に載っていない字だと承知のうえで、世間で通っているから使う、鮴はそういう字でした。この項の書き出しは「山城加茂川の名産なり」で、京都の加茂川(鴨川)の名産としてゴリを紹介しています。

世間でこの字がいつごろから使われていたかについては、古典籍の抜き書きを集めた『古事類苑(こじるいえん)』の動物部、コマ695に手がかりがありました。

『古事類苑』コマ695が引く『毛吹草』の「山城」と「加賀 淺野川鮴」の大写し
右が出典の名「毛吹草 三」と「山城」。左が同じ行の続きの「加賀 淺野川鮴」。鮴の右下に小さく「ゴリ」。一列を二つに切って並べた。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『古事類苑』動物部・神宮司庁編・明治43年・NDL PID:1874269 コマ695・著作権保護期間満了)

「加賀 淺野川鮴」。

引かれているのは、国ごとの産物の名を並べた巻を持つ江戸時代の俳諧の本『毛吹草(けふきぐさ)』で、その加賀の国の欄に、冒頭の錦絵と同じ浅野川の鮴が挙がっています。京の加茂川と加賀の浅野川と、鮴は川の名産の名を書く字として、世間で使われていたことになります。

中国では別の魚? 学者の本は、鮴の字を使わなかった

鮎や鮭のように、中国の本と日本とで指すものが違う字はいくつもありますが、鮴の場合は、まず読みの登録のされ方が目を引きます。Unicode の Unihan Database が鮴に登録している日本語の読みは訓の「ごり」「めばる」だけで、音読みはなく、江戸の学者の本もゴリにこの字を当てていませんでした。

貝原益軒(かいばら・えきけん)の『大和本草(やまとほんぞう)』(宝永6年=1709年刊)は、巻十三のコマ8でゴリを扱っています。

『大和本草』巻十三コマ8のカタカナの見出し「ゴリ」と「又名イシブシ賀茂川ニ」の大写し
右が見出し「ゴリ」と、続く「二種アリ一種腹下(ニ)」。左は同じ項の「(ナ)リ又名イシブシ賀茂川ニ」。二か所を切り出して並べた。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『大和本草』巻十三・貝原篤信著・宝永6年刊・NDL PID:2557359 コマ8・著作権保護期間満了)

見出しはカタカナの「ゴリ」で漢字はなく、別の名前として「イシブシ」を挙げて「賀茂川ニ多シ」と書いています。益軒はゴリには二種あるとして、腹の下に丸いひれがあって石につくものを「是眞ノゴリナリ」、これが本当のゴリだ、としました。寺島良安(てらじま・りょうあん)の絵入り百科事典『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』では、巻四十八のコマ14に出てきます。

『和漢三才図会』巻四十八コマ14の見開き。右ページの中ほどに見出し「石斑魚」
『和漢三才図会』巻四十八の見開き。右ページの中ほどに見出し「石斑魚」があり、説明が左へ続く。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『和漢三才図会』巻四十八・寺島良安編・江戸時代刊・NDL PID:2596381 コマ14・著作権保護期間満了)
『和漢三才図会』コマ14の見出し「石斑魚」と振り仮名「いしぶし」、「俗云石伏」の大写し
見出し「石斑魚」。右肩に振り仮名「いしぶし」。下に「石礬魚」「高魚」「俗云石伏」。左下の小さな字は、別の二つの字を挙げて「用之非也」。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『和漢三才図会』巻四十八・寺島良安編・江戸時代刊・NDL PID:2596381 コマ14・著作権保護期間満了)

見出しは「石斑魚」で振り仮名は「いしぶし」、世間での書き方として「俗云石伏」を挙げていて、ここにも鮴の字はありません。人見必大(ひとみ・ひつだい)の食物の本『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』(元禄10年=1697年刊)は、巻七のコマ155、カジカの項のなかでゴリに触れています。

『本朝食鑑』巻七コマ155の「古里魚 賀俗稱」の大写し
名前を並べた欄の「古里魚」。下の小さな字は「賀俗稱」。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『本朝食鑑』巻七・人見必大著・元禄10年刊・NDL PID:2557333 コマ155・著作権保護期間満了)

「古里魚 賀俗稱」、古里魚(ごりうお)は加賀での世間の呼び名だ、という注記で、字は音を写した「古里」でした。必大はこの項のすぐ次にイシブシの項を別に立てていて(コマ156)、見出しの字は魚へんに巨の「鮔」、「訓伊志布之」と読みが添えてあります。名前を並べた欄の最初の字は、一瞬「鮴」に見えました。

右に『日本山海名産図会』の見出し「鮴」、左に『本朝食鑑』の釋名の欄の「鮇」を並べた大写し
右は『日本山海名産図会』コマ19の見出し「鮴」(右肩の振り仮名は「ごり」)。左は『本朝食鑑』コマ156のイシブシの項で、名前を並べた欄の最初の字「鮇」。二冊から切り出して並べた。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『日本山海名産図会』巻之四・NDL PID:2575829 コマ19/『本朝食鑑』巻七・人見必大著・元禄10年刊・NDL PID:2557333 コマ156・著作権保護期間満了)

並べてみると右側が違っていて、鮴の右側が人べんに木の「休」なのに対し、本朝食鑑の字の右側には人べんがなく、横画が二本の「未」です。魚へんに未の「鮇」で、同じ欄に「音末」と字音も添えてありました。カタカナ、石斑魚、石伏、古里魚、そして鮔と鮇と、学者の本はそれぞれ別の書き方をしていて、鮴は使っていません。なぜ「休」なのかも、今回開いた本には書かれていませんでした。

とり方の名前は「鮴押」

名産図会は、字の注のあとに、とり方をくわしく書いています。

『日本山海名産図会』巻之四コマ20の見開き図。川の浅瀬で、むしろを広げた人と、川底をこする人。岸に見物の人たち。右上の題は「加茂川鮴捕」
題は「加茂川鮴捕」。浅瀬にむしろを広げて持つ人と、川下から川底をこすって追う人が描かれている。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『日本山海名産図会』巻之四・NDL PID:2575829 コマ20・著作権保護期間満了)
『日本山海名産図会』コマ19の「漁捕ハ筵二枚を継ぎて」から「是を鮴押と云」までの4列と翻刻
「○漁捕ハ筵二枚を継ぎて浅瀬に伏せ小石を多く置き一方の両方の耳を二人して持あげゐれバ又一人川下より長さ三尺余りの撞木を以て川の底をすりて追登る魚追ハれて筵の上の小石に付き隠るを其侭石ともにあげ採るなり是を鮴押と云」
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『日本山海名産図会』巻之四・NDL PID:2575829 コマ19・著作権保護期間満了)
翻刻と現代語訳をテキストで読む

翻刻

○漁捕ハ筵二枚を継ぎて浅瀬に伏せ小石を多く置き一方の両方の耳を二人して持あげゐれバ又一人川下より長さ三尺余りの撞木を以て川の底をすりて追登る魚追ハれて筵の上の小石に付き隠るを其侭石ともにあげ採るなり是を鮴押と云

現代語訳

○とり方は、むしろ二枚をつないで浅瀬に伏せ、小石をたくさん置く。片方の両はしを二人で持ち上げていると、もう一人が川下から、長さ三尺あまりの撞木(しゅもく)で川の底をこすりながら追い上げてくる。魚は追われて、むしろの上の小石について隠れる。それを石ごと上げてとる。これを鮴押(ごりおし)という。

むしろ二枚をつないで浅瀬に伏せ、小石をたくさん置いて、片方のはしを二人で持ち上げておく。もう一人が川下から三尺あまりの撞木で川底をこすりながら追い上げると、追われた魚はむしろの上の小石について隠れるので、それを石ごと上げてとる、というやり方で、「是を鮴押と云」、これを鮴押(ごりおし)という、と名前まで書いてあります。

『日本山海名産図会』の「是を鮴押と云」と、図の題「加茂川鮴捕」「加賀淺野川之鮴捕」の大写し
右がコマ19の「是を鮴押と云」。鮴押の右に振り仮名「ごりおし」。中央はコマ20の図の題「加茂川鮴捕」、左はコマ21の図の題「加賀淺野川之鮴捕」。三つのコマから切り出して並べた。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『日本山海名産図会』巻之四・NDL PID:2575829 コマ19・コマ20・コマ21・著作権保護期間満了)

名産図会は続けて、加賀の浅野川のゴリも名産だと書いています。とり方は加茂川と同じで道具の名前が違うだけ、むしろの代わりに割った竹で作った大きな箕(み)のようなものを使い、厚い板を竹ではさんだ道具に足をかけて、石の間をこすって追う、とあります。

『日本山海名産図会』巻之四コマ21の見開き図。松の生えた山あいの川。右下の流れの中に、道具を持った人が三人。左上の題は「加賀淺野川之鮴捕」
題は「加賀淺野川之鮴捕」。右ページの下、川の流れの中に、道具を持った人が小さく描かれている。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『日本山海名産図会』巻之四・NDL PID:2575829 コマ21・著作権保護期間満了)

冒頭の錦絵でも、川の中の三人は、板のような道具とざるのような道具を手にしていました。金沢市が公開しているごり料理の資料は、浅野川や犀川で行われていた「ごり押し漁」を、川底の石の下にひそむゴリを専用の板で石を起こしながらざるに追い込む漁、と説明し、強引に物事を進める意味の「ごり押し」はこの漁法が語源といわれている、とも書いています。江戸の本で確かめられるのは、漁の名前が「鮴押」だった、というところまでです。

メバルは「眼張」「目張」

鮴には「めばる」の読みもありますが、江戸の本でメバルを書いた字は別のものでした。

『梅園魚品図正』巻一コマ36の見開き。上に目の大きな赤みのある魚、下に金色と黒のフナが二尾
毛利梅園が写生した魚。上の目の大きな魚がメバル。下の二尾はフナ。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『梅園魚品図正』巻一・毛利梅園・写本・NDL PID:1287112 コマ36・著作権保護期間満了)
『梅園魚品図正』コマ36の書き入れ「海魚類 目張 メバル」の大写し
メバルの絵の左上の書き入れ。「海魚類」「目張」、その下に小さく「メバル」。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『梅園魚品図正』巻一・毛利梅園・写本・NDL PID:1287112 コマ36・著作権保護期間満了)

毛利梅園(もうり・ばいえん)の図譜では「目張」、目が張っている、と書いています。

『和漢三才図会』巻四十九コマ22の見出し「眼張魚」と振り仮名「めばる」、「正字未詳」「俗云米波留」の大写し
見出し「眼張魚」。右肩に振り仮名「めばる」、その下に「正字未詳」。下の小さな字は「俗云米波留」。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『和漢三才図会』巻四十九・寺島良安編・江戸時代刊・NDL PID:2596381 コマ22・著作権保護期間満了)

良安は「眼張魚」と書いて「正字未詳」、正しい字はわからない、と添えました。

『言海』の見出し「ごり(名)魚ノ名、いしぶしニ同ジ」と「めばる(名)目張」の大写し
右がコマ258の「ごり(名) 魚ノ名、いしぶしニ同ジ。」。左がコマ580の「めばる(名)」と、枠で囲んだ「目張」、続く「魚ノ名」。二つのコマから切り出して並べた。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『言海』大槻文彦・明治22〜24年・NDL PID:992954 コマ258・コマ580・著作権保護期間満了)

明治の国語辞書『言海(げんかい)』(明治22〜24年刊)もメバルは「目張」で、ゴリのほうは見出しに漢字を立てず、「いしぶしニ同ジ」とだけ書いています。今回開いた江戸・明治の本に、鮴をメバルと読ませた例は見つかりませんでした。

どんな魚か ゴリは川の小魚、メバルは海の岩場の魚

ゴリは一種類の魚の名前ではなく、農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」によれば、金沢では浅野川や犀川でとれるカジカ科のカジカと、河北潟でとれるハゼ科のウキゴリを、まとめてゴリと呼んでいます。『言海』は「いしぶし」の姿を「形、はぜニ似テ」「頭大ク、口闊クシテ扁ク」「石ニ吸ヒツキテ、水上ニ浮バズ」と書いていて、ハゼに似て頭が大きく、口は広くて平たく、石に吸いついて水の上には浮かばない魚です。

メバルのほうは海の魚で、市場に多いウスメバルについて、青森県の水産の研究機関がまとめた資料から数字を拾いました。

ウスメバルの基本データ

仲間
メバルやクロソイと同じフサカサゴ科
分布
北海道の函館周辺から九州まで。主に日本海沿岸
生まれ方
卵胎生。メスの体内でふ化し、体長4mmで生まれる
子どものころ
流れ藻について浮遊生活を送り、体長約35mmで海底の暮らしに移る
おとな
3歳以上になると、水深80〜150mの岩礁域にすむ
とり方(青森県)
一年を通して釣りでとる。5〜8月は刺し網や定置網でも多くとれる

青森県水産総合研究センターほか「うすめばるトータルプラン推進事業の成果」(平成20年7月)による

出典は、青森県のうすめばるトータルプラン推進事業の成果で、小泊沖でとれるウスメバルは「海峡メバル」として中央市場に出荷されている、とも書かれています。

市場の現場から メバルは1kg1,442円

東京都中央卸売市場(豊洲市場など)の令和7年(2025年)の年次統計から、1kgあたりの平均価格を拾いました(東京都中央卸売市場 市場統計情報・年次統計資料、「品目別・月別平均価格」)。

統計の区分

年間平均(1kg)

いちばん高い月

いちばん安い月

めばる(生鮮)

1,442円

8月 1,857円

6月 1,160円

「めばる」の年間平均は1kg1,442円で、同じ統計で量の多い「まあじ」が744円ですから、そのおよそ2倍です。鮮魚ぜんたいの平均1,691円(マグロなどを含む)よりは少し低く、月ごとの平均は6月の1,160円から8月の1,857円のあいだでした。統計に「ごり」の区分はなく、「めばる」にどの種類が含まれるのかも、この表からは分かりません。

筆者が市場で見てきたこと

ここからは、筆者が市場でメバルとゴリを見てきた経験です。市場で単に「メバル」といえばウスメバルを指すことが多く、「赤メバル」と呼ぶこともあります。黒いメバルは「黒メバル」と呼ぶことが多く、白いものはとくに分けられておらず、ウスメバルという名前は市場ではあまり知られていません。選ぶときに見るのは目の張りと澄み、身の張りと腹の硬さ、体の色つやで、それに表面が乾いていないか、においが出ていないかも見ます。最近はわりと一年を通して入ってきて、値は年間を通してあまり大きくは変わらず、いつも高級な魚です。ゴリは量は少ないものの、たまに入荷があり、値は高くありません。

これを公開されている数字や資料と突き合わせると、メバルといえばウスメバルという点は、青森県の資料の「海峡メバル」と重なり、ウスメバルがメバルの名で中央の市場に出荷されています。一年を通して入ってくることも、同じ資料が青森県では周年、釣りでとると書いていました。赤と黒の呼び分けは明治の『言海』にもあって、メバルの項に「赤ト黑トノ二種アリ」とあります。

値については、統計の月ごとの平均が1,160円から1,857円と、筆者の実感よりは月による開きのある数字でした。ゴリについては、「にっぽん伝統食図鑑」が、金沢では近年ゴリの漁獲量が減り、高級食品になりつつある、と書いていて、筆者の見てきた市場での値とは様子が違います。

言葉と文化 「ごり」と呼ぶと、手のひらに寄ってくる

ゴリという名前について、『本朝食鑑』の必大は加賀のならわしを書きとめています。

『本朝食鑑』巻七コマ155の「賀州俗夏秋乗凉」から「用魮字」までの3列と翻刻
「(古)里亦聲、如曰吾里吾里。賀州俗、夏秋乗凉、群集河邊、人人握香餌于掌中、掬水呼古里、則魚群來入掌中、因捕之、一夕滿籃而息。或曰、用魮字。漢丘仲……」(原本の送り仮名は省いた)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『本朝食鑑』巻七・人見必大著・元禄10年刊・NDL PID:2557333 コマ155・著作権保護期間満了)
翻刻と現代語訳をテキストで読む

翻刻

(古)里亦聲、如曰吾里吾里。賀州俗、夏秋乗凉、群集河邊、人人握香餌于掌中、掬水呼古里、則魚群來入掌中、因捕之、一夕滿籃而息。或曰、用魮字。漢丘仲……

現代語訳

「古里(ごり)」というのも声のことで、「ゴリゴリ」と言うようなものだ。加賀の国のならわしでは、夏や秋に涼みがてら川べりに集まり、めいめいが香りのよい餌を手のひらに握って、水をすくいながら「ごり」と呼ぶ。すると魚が群れて手のひらに入ってくるので、それを捕まえる。一晩でかごがいっぱいになると、やめる。魮の字を使う、という人もいる。……

加賀では夏や秋の涼みがてら人々が川べりに集まり、めいめいが香りのよい餌を手のひらに握って、水をすくいながら「ごり」と呼ぶ。「掬水呼古里、則魚群來入掌中」、すると魚が群れて手のひらに入ってきて、そうして一晩でかごがいっぱいになる、と必大は書いています。もう一つの名前「石伏(いしぶし)」のほうは、良安が由来を書いていました。

『和漢三才図会』巻四十八コマ14の「按石斑魚」から「談義坊主」までの3列と翻刻
「△按石斑魚状似彈塗魚而頭大尾細有鬚有硬鬐有細鱗如無其背斑文淺黒色腹白大者三四寸常伏石間故稱石伏又背腹其黒者呼名談義坊主」
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『和漢三才図会』巻四十八・寺島良安編・江戸時代刊・NDL PID:2596381 コマ14・著作権保護期間満了)
翻刻と現代語訳をテキストで読む

翻刻

△按石斑魚状似彈塗魚而頭大尾細有鬚有硬鬐有細鱗如無其背斑文淺黒色腹白大者三四寸常伏石間故稱石伏又背腹其黒者呼名談義坊主

現代語訳

考えるに、石斑魚は姿が弾塗魚に似て、頭が大きく尾が細い。ひげがあり、かたいひれがあり、細かいうろこは無いかのようだ。背のまだら模様は浅い黒で、腹は白い。大きいものは三、四寸。いつも石の間に伏している。だから石伏と呼ぶ。また、背も腹も黒いものを談義坊主と呼ぶ。

「常伏石間、故稱石伏」、いつも石の間に伏しているから石伏と呼ぶ、という説明です。鮴の字の「休」がどこから来たのかは本に書かれていませんが、別の名前のほうは、石の間でじっと伏している姿から付いていました。

食べ方 唐揚げ、ごり汁、佃煮

金沢市の資料は、代表的なごり料理として唐揚げ、洗い、ごり汁を挙げていて、ごり汁はささがきのゴボウを入れた白味噌の汁、唐揚げはひれが広がって泳ぐ姿のままに揚がるよう、生きているゴリを使うことが多い、とあります。農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」が載せている金沢のごりの佃煮は、ゴリを塩もみしてぬめりを取り、醤油・砂糖・酒を煮立てた鍋に入れ、粒山椒を加えて弱火でじっくり煮込むもので、ぬめりを取るときは水が透き通るまでよく洗う、と書いてあります。名産図会が加茂川と浅野川の名産として書いた魚は、いまも金沢の料理に残っています。

鮴

  • 読みは「ごり」。「めばる」とも読む。魚へんに休、17画。音読みはない
  • 『日本山海名産図会』は見出しに鮴を立て、「字書に見ることなし 姑く俗に從がふ」と注記した
  • 名産図会は京の加茂川の名産として、『毛吹草』は加賀の産物「淺野川鮴」として、この字を使った
  • 『大和本草』はカタカナの「ゴリ」、『和漢三才図会』は「石斑魚」、『本朝食鑑』は「古里魚」。学者の本は鮴を使わなかった
  • とり方の名前は「鮴押」。むしろに追い込んで石ごと上げる
  • 江戸・明治の本はメバルを「眼張」「目張」と書いた。東京の市場のメバルは1kg1,442円(令和7年)

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関連する漢字

ゴリと近い川の魚の字は、鰍(魚へんに秋)の記事で読んでいます。江戸の本が「正字未詳」と書いた魚には、鱚(魚へんに喜)や鯏(魚へんに利)があり、江戸の学者が「日本で作った字」と名指しした字は、魚へんの国字の記事にまとめました。ほかの字は魚へんの漢字一覧と、魚へんの漢字の由来の索引にまとめています。

この記事でわかったこと

  • 「鮴」と書いてゴリと読みます。

    メバルと読むこともあります。Unicode の Unihan Database(U+9BB4)に登録されている日本語の読みは訓の「ごり」「めばる」で、音読みはありません。17画の字です。

  • 鮴は、江戸の本が「字書に見ることなし」と書いた字です。

    『日本山海名産図会』巻之四は、見出しに鮴を立てて「ごり」と振り仮名をつけ、すぐ下に「字書に見ることなし 姑く俗に從がふ」と注記しています(NDL PID:2575829 コマ19)。なぜ「休」なのかは、今回開いた本には書かれていませんでした。

  • ゴリは、川の石の下にいる小さな魚の呼び名です。

    農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」は、金沢では浅野川や犀川でとれるカジカ科のカジカと、河北潟でとれるハゼ科のウキゴリをまとめてゴリと呼ぶ、と説明しています。江戸の『大和本草』は、別の名前を「イシブシ」としています(NDL PID:2557359 コマ8)。

  • 江戸の『日本山海名産図会』は、むしろに魚を追い込んで石ごと上げるゴリのとり方を「是を鮴押と云」と書いています(NDL PID:2575829 コマ19)。

    金沢市の資料は、強引に物事を進める意味の「ごり押し」はこの漁法が語源といわれている、と紹介しています。江戸の本で確かめられるのは、漁の名前が鮴押だったことまでです。

  • 江戸・明治の本は、メバルを「眼張」「目張」と書いています。

    『和漢三才図会』は見出しを「眼張魚」として「正字未詳」と添え(NDL PID:2596381 コマ22)、毛利梅園の図譜と明治の『言海』は「目張」です。鮴にも「めばる」の読みがありますが、今回開いた本に、鮴をメバルと読ませた例は見つかりませんでした。

  • 東京都中央卸売市場の令和7年(2025年)の年次統計では、「めばる」の年間平均は1kg1,442円でした。

    月ごとの平均は、6月の1,160円から8月の1,857円のあいだです。同じ統計に「ごり」の区分はありません。

この記事で開いた原本

どれも国立国会図書館デジタルコレクションで、無料・登録なしで読めます。コマ番号から該当ページが開きます。

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