魚へんに葉の読み方はカレイ|鰈の漢字の由来は「くつ底の魚」
この字、読めますか?
鰈
- 訓
- かれい
- 音
- チョウ・トウ
- 画数
- 20画
この記事の目次
魚へんに、葉っぱの「葉」の下の部分を書く「鰈」は、カレイと読みます。煮付けでおなじみの、あの平たい魚の字です。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『梅園魚品図正』巻一・毛利梅園・天保6年序・NDL PID:1287112 コマ14・著作権保護期間満了)
葉のように平たい魚だからこの漢字になった、と由来を想像したくなる字ですが、江戸の学者が読んでいた中国の本を開くと、この字の説明に書いてあるのは「葉」ではなく「くつ底」の話でした。それでいて同じ項を読み進めると、数ある別名のなかに、思いがけず葉の名前がまぎれています。あわせて東京の市場の統計から、いまのカレイの値段も拾いました。
「鰈」の基本データ
- 読み
- かれい(訓)/チョウ・トウ(音)
- 画数
- 20画(魚へん11画+右側9画)
- 形
- 魚へんに「枼」。葉・蝶と同じ部分
- 生まれ
- 中国の字。日本で作った国字ではない
- 中国語
- dié。同じく平たい魚の字
- 難易度
- 中級
読みと画数・中国語音は Unicode の Unihan Database(U+9C08)による
字の成り立ち 原本を開くと「葉」ではなく「屧」
中国・明の李時珍(りじちん)がまとめた薬の百科事典『本草綱目(ほんぞうこうもく)』は、承応2年(1653年)に日本で彫り直された版が残っていて、その巻四十四のコマ93にカレイの項があります。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『本草綱目』巻四十四 鱗部・李時珍撰・承応2年刊・NDL PID:2556596 コマ93・著作権保護期間満了)
見出しは「鰈」ではなく「比目魚」、目の並んだ魚で、「鰈」のほうは名前を説明する「釈名」の欄に出てきます。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『本草綱目』巻四十四 鱗部・李時珍撰・承応2年刊・NDL PID:2556596 コマ93・著作権保護期間満了)
翻刻と現代語訳をテキストで読む
翻刻
比目魚(カレイ) 食療釋名 鰈(音蝶) 鞋底魚 時珍曰、比、並也。魚各一目、相並而行也。爾雅所謂東方有比目魚、不比不行、其名曰鰈、是也。段氏北戸録謂之鰜、音兼。吳都賦謂之魪、音介。上林賦謂之魼、音墟。鰈猶屧也。鰜、兼也。魪、相介也。魼、相胠也。俗名鞋底魚。臨海志名婢簁魚。臨海風土記名奴屩魚。南越志名版魚。南方異物志名箬葉魚。皆因形也。
現代語訳
比目魚(カレイ)。【名前】鰈(音は蝶)、鞋底魚ともいう。李時珍いわく、「比」は並ぶこと。この魚はそれぞれ目が一つで、二匹が並んで泳ぐ。『爾雅』のいう「東方に比目魚あり、並ばなければ進めない、その名を鰈という」がこれである。段公路『北戸録』は鰜、『呉都賦』は魪、『上林賦』は魼と呼ぶ。鰈は屧のようなもの。鰜は兼ねる、魪は互いに介する、魼は互いに脇につくこと。世間では鞋底魚(くつ底の魚)という。『臨海志』は婢簁魚、『臨海風土記』は奴屩魚、『南越志』は版魚、『南方異物志』は箬葉魚(竹の葉の魚)と呼ぶ。みな形による名である。
まず「鰈(音蝶)」とあって、この字の音は蝶と同じだと示し、続いて中国の古い辞書『爾雅(じが)』から「東方有比目魚、不比不行、其名曰鰈」、東方に比目魚がいて、並ばなければ進めない、その名を鰈という、と引いています。鰈は中国の古い辞書にすでに載っていた字で、日本で作った国字ではありません。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『本草綱目』巻四十四 鱗部・李時珍撰・承応2年刊・NDL PID:2556596 コマ93・著作権保護期間満了)
字そのものの説明は「鰈猶屧也」、鰈は屧のようなものだ、のたった四字です。大写しの「屧」をよく見ると、その中にも鰈と同じ「枼」が入っていて、続く「俗名鞋底魚」は、世間では鞋底魚、つまりくつ底の魚と呼ぶ、という意味です。
それなら葉はどこにも出てこないのかというと、釈名をもう少し読み進めたところに、地方の本に出てくる別名が並んでいます。『臨海志』は婢簁魚、『臨海風土記』は奴屩魚、『南越志』は版魚と呼び、最後に『南方異物志』は「箬葉魚」と呼ぶ、とあります。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『本草綱目』巻四十四 鱗部・李時珍撰・承応2年刊・NDL PID:2556596 コマ93から切り出し・著作権保護期間満了)
箬(じゃく)は葉の広い竹を指す字で(Unicode Unihan Database)、箬葉魚は竹の葉の魚になります。続く四字「皆因形也」は、ここまでの名前はどれも形から付いた、というまとめです。葉に見立てた名前は中国の本にもあったわけですが、それは数ある別名の一つにすぎず、鰈という字そのものの説明は「鰈猶屧也」の四字だけでした。
中国でも同じ魚、ただし「二匹で泳ぐ魚」
鮎や鮭のように、中国の本と日本とで指す魚が違う字もありますが、鰈は中国でも同じ平たい魚を指していて、先ほどの『本草綱目』の余白にも朱で「俗称加礼伊是也」と書き入れてありました。同じ余白には墨の書き入れもあり、「鰈」に「カレイ」、「鮃」に「ヒラメ」と振り仮名をつけ、線で見出しの比目魚へつないでいますから、この本を読んだ人は、比目魚という一つの見出しにカレイとヒラメの二つの和名を当てていたことになります。
ただ、魚の説明は奇妙です。「魚各一目、相並而行也」、この魚はそれぞれ目が一つで、二匹が並んで泳ぐ、と李時珍は書き、比目魚の「比」は二匹が並ぶことだというのです。これに反論したのが、寺島良安(てらじま・りょうあん)の絵入り百科事典『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』の巻五十一、コマ23でした。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『和漢三才図会』巻五十一・寺島良安編・江戸時代刊・NDL PID:2596382 コマ23・著作権保護期間満了)
良安は目の並び方を「其兩眼相去甚近、向上而相比。故名比目魚乎」と書いています。二つの目はたいへん近く、上を向いて並んでいるから、比目魚と名づけたのだろう、という見立てです。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『和漢三才図会』巻五十一・寺島良安編・江戸時代刊・NDL PID:2596382 コマ23・著作権保護期間満了)
翻刻と現代語訳をテキストで読む
翻刻
△按、倭名抄亦用王餘魚、訓加良衣比、謬也。王餘魚乃膾殘魚也。鰈形似魴而扁、頭小口尖、黒紫、有細鱗、裏白滑。其兩眼相去甚近、向上而相比。故名比目魚乎。然本草引爾雅云、鰈一目、而不比不行、故兩片相合乃得行之說、非也。不知別……
現代語訳
(良安の考え)『倭名抄』は王餘魚の字を使って「からえひ」と読ませているが、誤りである。王餘魚は膾残魚のことだ。鰈は魴に似て平たく、頭は小さく口はとがり、黒紫色で細かい鱗があり、裏は白くなめらか。その二つの目はたいへん近く、上を向いて並んでいる。だから比目魚と名づけたのだろう。しかし『本草綱目』が『爾雅』を引いて、鰈は目が一つで、並ばなければ進めない、だから二匹が合わさってやっと泳げる、というのは誤りである……
そのうえで、二匹が合わさってやっと泳げるという説は「非也」、誤りである、と書きました。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『和漢三才図会』巻五十一・寺島良安編・江戸時代刊・NDL PID:2596382 コマ23・著作権保護期間満了)
並んでいるのは二匹の魚ではなく一匹の二つの目で、冒頭の梅園の絵でも、背の側に目が二つ寄っています。
「カレイ」は一種類ではない
カレイは一種類の魚の名前ではなく、東京都中央卸売市場の統計は、生のカレイの仲間だけで「まかれい」「まこかれい」「いしかれい」「なめたかれい」など15の区分に分けて値段を記録しています(東京都中央卸売市場 市場統計情報・年次統計資料、令和7年「品目別・月別平均価格」)。ここでは、そのうちマコガレイを例にとります。
マコガレイの基本データ
- 分類
- カレイ目カレイ科
- 分布
- 北海道南部以南から大分県付近、朝鮮半島南部、東シナ海
- すみか
- ふつう水深100mより浅い砂泥の底
- 大きさ
- 最大で体長45cm
- 寿命
- 約10年
- 産卵期
- 12月〜翌年4月(青森県内でも海域で違う)
- 漁法
- 底建網・さし網・底びき網
分類と大きさは FishBase、ほかは青森県産業技術センター水産総合研究所の資料による
数字は、青森県産業技術センター水産総合研究所のマコガレイの資源資料と、魚類データベース FishBase で確かめました。食べごろについては、宮城県気仙沼地方振興事務所水産漁港部のカレイの紹介資料が、冬に産卵を終えたマコガレイは春から夏にかけて肉質が向上していく、と書いています。
市場の現場から 活けのカレイは1kg4,796円
東京都中央卸売市場(豊洲市場など)の令和7年(2025年)の年次統計から、1kgあたりの年間平均価格を拾いました。
統計の区分 | 年間平均(1kg) | いちばん高い月 |
|---|---|---|
かれい類(生の合計) | 796円 | 8月 1,129円 |
まかれい | 540円 | 10月 732円 |
まこかれい | 1,033円 | 8月 1,484円 |
なめたかれい | 1,272円 | 11月 1,800円 |
活かれい | 4,796円 | 8月 8,277円 |
目を引くのはいちばん下の「活かれい」で、生きたまま取引されるカレイの年間平均は1kg4,796円。生の「まかれい」540円の約9倍、「かれい類」全体の平均796円と比べても約6倍で、同じ統計の活魚14品目のなかでもいちばん高く、「活ひらめ」の3,067円も上回っていました。ただし量はわずかで、年間の取扱数量は81トン、金額は約3億8,600万円(同「主要品目別取扱高」)、活魚全体のなかで数量は0.7%、金額は1.7%にとどまります。
月ごとに見ると、活かれいは8月が8,277円でいちばん高く、2月が3,267円でいちばん安く、まこかれいも8月が最高値です。宮城県の資料が書く「春から夏にかけて肉質が向上」と、値の高い時期が重なっています。もっとも、統計の「活かれい」にどの種類のカレイが含まれるのかは、この表からは分かりません。
筆者が市場で見てきたこと
東京の市場で活けとして扱われるカレイは、筆者の経験では主にマコガレイで、現場では「マコ」と略して呼び、ナメタガレイは「ナメタ」です。選ぶときにまず見るのは身の厚み、次に腹側のスレで、白い腹が擦れて赤くなっているものは、身に血がにじんでいる場合があります。野締めのものは、死後硬直がとけていないか、匂いが出ていないかを確かめ、とくに底引き網で獲ったものは匂いが出るのが早いので注意して見ます。
値の高い時期は種類で違い、マコは夏、子持ちのカレイとナメタは冬です。なかでもナメタは東北の年末には絶対に欠かせない魚で、年末の東北では東京よりも高い値がつきます。
これは数字でも確かめられました。仙台市中央卸売市場の令和7年の年報では、「なめたがれい」の年間の取扱量は約259トンで、そのうち約149トンが12月、一年ぶんの6割近くが12月のひと月に集まっています。12月の平均価格は1kg1,670円で、同じ月の東京の1,482円より仙台のほうが高値でした。
仙台市場は年末に「主要魚介類の入荷と価格の見通し」を公表していて、マグロやタラ、数の子と並んでナメタガレイの項を立てています。令和6年12月の資料には、11月は釧路・根室産、12月は日高産を中心に入荷が増える見込みとあり、年越しの魚が北海道から東北へ集まってくる様子が見えます。
言葉と文化 「片割れ魚」と年取り魚
日本語の「カレイ」という名前については、貝原益軒(かいばら・えきけん)の『大和本草(やまとほんぞう)』(宝永6年=1709年刊)が、巻十三のコマ35で説を立てています。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『大和本草』第7冊 巻13・14・貝原篤信・宝永6年・NDL PID:2557359 コマ35・著作権保護期間満了)
翻刻と現代語訳をテキストで読む
翻刻
比目魚(カレイ) 此魚背黒ク腹白クシテ魚ノ半片ノ如シ。カタワレイヲト云意ニテ畧シテカレイト名ツク。目ハ一處ニ二アリ近シ。一名鰈。二種アリ。一種ハツ子ノカレイ也。一種ハ□底魚(クツゾコ)ト云。關東ニテ平目ト云……
現代語訳
比目魚(カレイ)。この魚は背が黒く腹が白く、魚を半分に割ったもの(半片)のようだ。「かたわれいを(片割れ魚)」という意味で、略してカレイと名づけた。目は一か所に二つあり、近い。またの名を鰈。二種類ある。一つはふつうのカレイ。もう一つは□底魚(振り仮名クツゾコ。□は革へんの字で、右側の形が確かめられない)といい、関東では平目(ヒラメ)という……
「此魚背黒ク腹白クシテ魚ノ半片ノ如シ」と、背が黒く腹が白く、魚を半分に割ったもののようだとしたうえで、「カタワレイヲト云意ニテ畧シテカレイト名ツク」、「かたわれいを(片割れ魚)」という意味で、略してカレイと名づけた、というのが益軒の説です。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(『大和本草』第7冊 巻13・14・貝原篤信・宝永6年・NDL PID:2557359 コマ35・著作権保護期間満了)
益軒は続けて、カレイには二種あり、一つはふつうのカレイ、もう一つは「クツゾコ」と振り仮名をつけた魚で、「關東ニテ平目ト云」、関東では平目と呼ぶ、と書いています。益軒の本では、ヒラメもカレイの一種として数えられていたわけで、江戸の魚市では大きさで呼び分けていたという話は、ヒラメとカレイの違いの記事で原本を読んでいます。
いまの暮らしのなかでは、カレイは年越しの魚でもあります。宮城県の資料はナメタガレイ(標準和名ババガレイ)を「宮城県の年取り魚」とし、子持ちの魚を縁起物として食べるため、産卵期の冬に多く出回ると書いています。東京の統計でも「なめたかれい」は5月の683円がいちばん安く、11月の1,800円がいちばん高く、年の暮れに向けて値が上がっていました。年越しに魚を食べる習わしは年取り魚の記事にまとめています。
食べ方 煮付けと、骨まで食べるから揚げ
宮城県の資料はマコガレイの料理として煮付け、フライ、ムニエルを挙げ、千葉県の水産課はかれいのから揚げと骨せんべいの作り方を公開しています。身を五枚におろして一口大に切り、醤油と酒で下味をつけ、小麦粉をまぶして180℃の油で揚げ、骨のほうはそのままゆっくり揚げる料理で、平たい体だからこそ、身を外したあとの骨まで一枚で揚げられます。
鰈
- 読みは「かれい」。魚へんに枼、20画
- 中国の字。『本草綱目』は「鰈猶屧也」、世間の名は「くつ底の魚」。別名には「箬葉魚」(竹の葉の魚)もある
- カレイの名は「片割れ魚」の略(貝原益軒)
- 東京の市場で活けのカレイは1kg4,796円。活魚14品目の最高値(令和7年)
UOMEDIA|uomedia.jp
この記事でわかったこと
訓読みは「かれい」、音読みは「チョウ」「トウ」です(Unicode Unihan Database)。
魚へんに、葉や蝶にも入っている「枼」を書く20画の字です。
『本草綱目』は比目魚(カレイ)の釈名で「鰈猶屧也」、鰈は屧のようなものと書き、世間では「鞋底魚」(くつ底の魚)と呼ぶとしています(承応2年刊本・NDL PID:2556596 コマ93)。
同じ項は、こうした別名はどれも形から付いた(皆因形也)とまとめ、『南方異物志』の別名「箬葉魚」(竹の葉の魚)も挙げています。
国字ではありません。
『本草綱目』は中国の古い辞書『爾雅』の「東方有比目魚、不比不行、其名曰鰈」を引いており、中国の本に古くからある字です(NDL PID:2556596 コマ93)。
貝原益軒『大和本草』は「此魚背黒ク腹白クシテ魚ノ半片ノ如シ。
カタワレイヲト云意ニテ畧シテカレイト名ツク」、魚を半分に割ったような「片割れ魚」の略だと書いています(NDL PID:2557359 コマ35)。
東京都中央卸売市場の令和7年(2025年)の年次統計では、生の「かれい類」の年間平均が1kg796円、生きたまま取引される「活かれい」が1kg4,796円でした。
活かれいは8月に8,277円でいちばん高くなっています。
この記事で開いた原本
どれも国立国会図書館デジタルコレクションで、無料・登録なしで読めます。コマ番号から該当ページが開きます。
- 梅園魚品図正.巻1
毛氏梅園元寿<毛利梅園>//撰輯 天保6(1835)序
- 本草綱目卷1-17,19-52,瀕湖脈學1卷奇經八脈攷1卷脈訣攷證1卷.[30]
明李時珍撰 承應2
- 和漢三才図会 : 105巻首1巻尾1巻.[35]
寺島良安尚順 編 [江戸時代]
- 大和本草 16巻附録2巻諸品図2巻.[7]
貝原篤信 宝永6 [1709]
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